公開日:2026.09.10

離婚裁判にかかる費用と期間は?提訴から判決・和解までの流れ

離婚裁判にかかる費用と期間は?提訴から判決・和解までの流れ

離婚調停が不成立になった、または相手から訴状が届いたとき、「裁判にはいくらかかるのか」「判決まで何年かかるのか」「仕事を続けながら対応できるのか」と不安になる方は少なくありません。

離婚裁判にかかる費用は、裁判所へ納める手数料・郵便料などと、弁護士へ依頼する場合の費用に分かれます。期間は一律ではなく、離婚原因だけを争うのか、親権、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料まで同時に争うのかによって変わります。

先に確認したいのは「総額はいくら」「必ず何か月で終わる」という一つの数字ではなく、何を請求し、どこが争点で、どの資料を提出できるかです。

本記事では、離婚裁判の費用の内訳、提訴から和解・判決までの流れ、裁判所の最新統計、長期化しやすい要因、相談前に準備したい資料を説明します。

※本記事は2026年9月2日時点の一般的な制度を説明するものです。個別事件の見通しや費用は請求内容、証拠、管轄裁判所等で異なるため、公開前に弁護士監修を行います。

離婚裁判(人事訴訟)とは|調停前置との関係

一般に「離婚裁判」と呼ばれる手続は、家庭裁判所へ離婚を求める訴えを提起する人事訴訟です。裁判所の離婚手続案内では、離婚そのものに加え、離婚後の親権者、養育費、財産分与、年金分割などを同時に決めるよう求めることができます。離婚に伴う慰謝料を併せて請求する場合もあります。

原則として先に離婚調停を行う

離婚をめぐる争いでは、原則として訴訟の前に家庭裁判所の調停を利用します。裁判所の人事訴訟手続案内にも調停前置の取扱いが示されています。調停は、裁判官と調停委員を介して話し合い、合意による解決を目指す手続です。調停で合意できず不成立となった場合、離婚を求める側は、必要に応じて離婚訴訟を提起します。

「相手と直接話したくない」「離婚理由が明確だから」という事情だけで、当然に調停を省略できるわけではありません。もっとも、相手が行方不明であるなど、調停による解決が見込めない事情がある場合には例外が問題となることがあります。調停を経ずに提訴できるかは、個別に確認してください。

調停が不成立になった後の選択肢は、離婚調停が不成立になった後の対応でも整理しています。

調停と裁判は判断の仕組みが異なる

調停は双方の合意がなければ成立しません。これに対し訴訟では、当事者が主張と証拠を提出し、合意できない場合は裁判所が法律と証拠に基づいて判決をします。

訴訟になれば、夫婦関係が悪化した経緯をすべて話せばよいわけではありません。法律上どの事実が離婚原因や各請求の判断に関係し、その事実を何で裏付けるかを整理する必要があります。相手が離婚に応じないときの進め方も、離婚意思と法定離婚原因を整理する際の参考になります。

離婚裁判にかかる費用|裁判所費用と弁護士費用

費用を検討するときは、少なくとも「裁判所へ納める費用」「資料取得や出廷等の実費」「弁護士費用」に分けます。

裁判所へ納める申立手数料

離婚のみを求める訴えの申立手数料は、裁判所の案内例では1万3,000円です。親権者の指定を求める場合を含むと案内されています。手数料の基本的な考え方は、裁判所の訴訟費用についても確認してください。

離婚と併せて財産分与、養育費等の子の監護に関する処分などを申し立てる場合は、附帯処分1件につき1,200円を加算する扱いが案内されています。慰謝料など金銭請求を併合する場合は、請求額等に応じて手数料が変わることがあります。

ただし、全国版の裁判所ページも、必要な収入印紙は請求内容によって異なるため提出先の家庭裁判所へ確認するよう案内しています。金額を自己計算だけで確定せず、実際の訴状と請求内容に基づいて確認してください。

郵便料とそのほかの実費

訴状等を送達するための郵便料も必要です。必要額や納付方法は裁判所によって異なるため、申立先の家庭裁判所の最新案内を確認します。このほか、次のような実費が生じることがあります。

  • 戸籍謄本、住民票、登記事項証明書等の取得費
  • 預貯金・保険・不動産等の資料取得費
  • コピー、郵送、交通、宿泊等の費用
  • 証人の旅費・日当
  • 鑑定や調査等が必要になった場合の費用

2026年5月21日に民事訴訟手続の全面デジタル化が始まりましたが、裁判所は、現時点で人事訴訟と家事事件をオンライン申立て等の対象外と案内しています。一般の民事訴訟の納付方法を、そのまま離婚訴訟に当てはめないよう注意してください。

弁護士費用は依頼範囲によって異なる

弁護士へ依頼する場合は、一般に相談料、着手金、報酬金、実費、日当などを確認します。調停から継続して依頼するのか、訴訟から新たに依頼するのか、親権・財産分与・慰謝料等をどこまで扱うのかでも見積りが変わります。

また、控訴、保全処分、強制執行などが必要になれば、第一審とは別の費用が生じる場合があります。契約前に、基本料金だけでなく、追加費用が発生する条件、報酬の算定対象、実費・日当、途中終了時の扱いまで確認してください。

裁判所費用と弁護士費用は別物です。「印紙代が1万3,000円だから、裁判全体もその金額でできる」という意味ではありません。

岩澤法律事務所への依頼費用は、古い記事上の金額ではなく、費用案内と個別の見積りをご確認ください。

提訴から答弁書提出までの流れ

離婚訴訟は、原告が家庭裁判所へ訴状を提出することから始まります。提出先は、原則として夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所です。先に調停を扱った裁判所が異なる場合、その裁判所で訴訟を扱うこともあります。

原告側|請求と根拠を訴状にまとめる

訴状には、離婚を求めること、親権者指定や財産分与等も求める場合はその内容、請求の根拠となる事実を記載します。裁判所が案内する標準的な提出書類には、訴状、夫婦の戸籍謄本、必要に応じて年金分割のための情報通知書、源泉徴収票や預金通帳などの証拠書類があります。

訴状を出す前に、次の点を整理します。

  • どの離婚原因を主張するか
  • 親権、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料を同時に求めるか
  • 相手の主張として何が予想されるか
  • それぞれの事実を裏付ける資料があるか
  • 和解する場合に譲れない条件と調整できる条件は何か

被告側|訴状を放置せず答弁書を出す

家庭裁判所から訴状と呼出状が届いた側は、指定期限までに答弁書を提出します。答弁書では、原告の請求や訴状に記載された事実を認めるか、否認するか、知らないかを区別し、反論の要点を示します。

「離婚したくない」とだけ書けば十分とは限りません。親権、養育費、財産分与等について自分から求める内容がある場合、手続上どのように主張・申立てを行うかも検討が必要です。期限直前まで放置せず、訴状一式、調停資料、戸籍、収入・財産資料を持って相談してください。

離婚裁判の提訴から和解または判決までの6段階

争点整理・証拠提出・本人尋問で行うこと

第1回期日の後は、複数回の期日を通じて主張と証拠を整理します。裁判所の「人事訴訟の流れ(離婚訴訟の例)」では、口頭弁論、争点・証拠の整理、証拠調べ、必要に応じた家庭裁判所調査官による調査、和解または判決という流れが示されています。

争点に沿って主張と証拠を結び付ける

離婚原因が争われる場合、不貞行為、暴力、長期間の別居など、主張する事実と証拠の関係を示します。財産分与では、基準時、財産の名義・価値、特有財産か共有財産か、負債をどう扱うかなどが争点になり得ます。

大量のメッセージや写真を提出すれば有利になるとは限りません。何を証明する資料なのか、取得経緯に問題がないか、個人情報をどう扱うかを確認します。違法・不適切な方法で証拠を集めないことも重要です。

子どもに関する事項では調査が行われることがある

親権者の指定などが争われる場合、家庭裁判所調査官が子どもや父母と面接するなど、行動科学の知識・技法を用いた調査を行うことがあります。子どもの生活状況、これまでの監護、父母の関係などが確認されることがあります。

子どもを相手方への非難の材料にしたり、発言を誘導したりすることは避けるべきです。現在の生活の安定と子どもの利益を中心に、学校、医療、日常の養育状況を客観的に整理します。

本人尋問では当事者が法廷で答える

書面と証拠の整理後、争点について当事者本人や証人から事情を聴く尋問が行われることがあります。本人尋問では、提出済みの陳述書やこれまでの主張との整合性も確認されます。

事実を誇張せず、質問をよく聞いて、自分が経験・認識している範囲を答えることが基本です。記憶が曖昧な点を断定したり、提出資料と異なる説明をしたりしないよう、事前に時系列と証拠を見直します。

和解で終わる場合と判決まで進む場合

離婚訴訟は、必ず判決で終わるわけではありません。裁判所は審理の途中で和解を試みることがあり、双方が条件に合意すれば和解離婚として解決できます。

和解は勝敗だけでなく実行可能性を調整できる

和解では、離婚することに加え、親権、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料、支払時期や方法などを具体的に定めることがあります。判決より柔軟に解決条件を組み立てられる場合がありますが、早く終わることだけを目的に、不明確な条件へ同意しないことが大切です。

分割払いにする場合は、金額、期日、振込先、期限の利益を失う条件などを確認します。不動産、保険、退職金、名義変更を伴う場合は、和解後に誰が何をいつまでに行うかまで詰めます。

合意できなければ判決へ進む

和解が成立せず、裁判所が判断に必要な審理を終えた場合、判決が言い渡されます。判決内容に不服がある場合は控訴を検討できますが、期限があります。判決を受け取ってから考え始めるのではなく、想定される判断と控訴方針を事前に相談しておくことが重要です。

和解・判決で離婚が成立した後は、戸籍の届出や、決めた条件を実行する手続も必要です。判決書や和解調書があるだけで、財産移転や支払いがすべて自動的に完了するわけではありません。

離婚裁判の期間|最新統計と長引く要因

裁判所が2025年6月に公表した「人事訴訟事件の概況―令和6年1月~12月―」によると、2024年に終局した人事訴訟全体の平均審理期間は14.8か月、そのうち離婚事件は15.5か月でした。被告側が口頭弁論期日で弁論し、判決で終局した離婚事件に限ると、平均20.5か月です。

15.5か月は、2024年に全国の家庭裁判所で終局した離婚事件の平均です。あなたの事件が15.5か月で終わるという予測値ではありません。

この統計は訴訟の受理から終局までを対象とし、提訴前の交渉・調停期間や、控訴した場合の期間を含む数字ではありません。また、早期の和解や取下げで終わった事件と、争点を整理して判決まで進んだ事件が混在しています。

期間を左右する主な要因

離婚裁判が長引く要因としては、次のようなものがあります。

  • 離婚原因について双方の認識が大きく異なる
  • 親権・監護状況に争いがあり、調査が必要になる
  • 財産の種類や取引が多く、評価・資料収集に時間がかかる
  • 財産開示の範囲、基準時、特有財産等をめぐって対立する
  • 慰謝料の原因事実や証拠を争う
  • 相手への送達、回答、資料提出に時間を要する
  • 本人尋問・証人尋問が必要になる
  • 和解条件を細部まで調整する

裁判所の長期化分析でも、財産分与の申立てがある事件で預金取引履歴等の資料収集をめぐり審理が難航することや、離婚原因について結論との関係が薄い周辺事情まで主張の応酬が続くことが挙げられています。

早期解決を望む場合も、必要な主張や資料を削ればよいわけではありません。争点を絞り、証拠との対応を明確にし、期限までに提出することが現実的な準備になります。

必要書類・相談準備・弁護士へ依頼するタイミング

相談時にすべてそろっていなくても構いません。まず、調停から現在までの流れと、裁判で決めたい事項を整理します。

基本資料

  • 裁判所から届いた訴状、呼出状、期日通知、提出期限が分かる書類
  • 調停申立書、事情説明書、不成立証明書等の調停関係書類
  • 夫婦の戸籍謄本、住民票など
  • 結婚、別居、問題発生、調停までの時系列メモ
  • 相手とのメール、メッセージ、手紙

お金に関する資料

  • 双方の源泉徴収票、給与明細、課税証明、確定申告書等
  • 預貯金、保険、有価証券、住宅ローン、借入れの資料
  • 不動産登記事項証明書、固定資産評価、査定資料
  • 退職金見込額、年金分割のための情報通知書
  • 養育費、婚姻費用、教育費、医療費等の記録

子どもに関する資料

  • 現在の監護状況とこれまでの役割分担
  • 学校、保育、医療、生活リズムに関する情報
  • 親子交流や連絡の記録
  • 子どもの生活環境を変更する予定がある場合の内容

資料は「相手の悪いところ」を集める観点だけでなく、各請求の判断に何が必要かという観点で整理します。原本しかない書類は安易に書き込み・廃棄せず、提出方法を確認してください。

早めに相談したい場面

次のような場合は、期限が迫る前に弁護士への相談を検討してください。

  • 離婚調停が不成立となり、訴訟を起こすか迷っている
  • 家庭裁判所から訴状や呼出状が届いた
  • 答弁書の提出期限が近い
  • 親権、子どもの居所、安全上の問題がある
  • 相手が財産を処分・移転するおそれがある
  • 不動産、事業、退職金、相続財産など財産関係が複雑である
  • 提出したい録音、写真、メッセージ等の扱いに迷っている
  • 和解案に応じるべきか判断できない

弁護士は、依頼者に代わって期日に対応できる場面がありますが、本人が一度も関与せずに終わるとは限りません。本人尋問や和解時の意思確認など、出席や準備が必要になる場面を見越し、仕事・育児との調整も相談してください。

よくある質問

Q. 離婚調停をせずに、すぐ裁判を起こせますか

A. 離婚を求める場合は、原則として先に家庭裁判所の離婚調停を利用します。調停で合意できず不成立となった後に離婚訴訟を提起するのが基本です。ただし、相手が行方不明で調停による解決が見込めないなど、例外が問題になることもあるため、事情を示して弁護士や裁判所に確認してください。

Q. 離婚裁判の費用は相手に請求できますか

A. 裁判所へ納める手数料や郵便料などの訴訟費用は、判決で負担者・負担割合が定められることがあります。一方、弁護士費用は原則として訴訟費用に含まれず、依頼した本人が負担します。「勝てば弁護士費用を全額相手に請求できる」とは限りません。

Q. 裁判中でも和解できますか

A. できます。離婚訴訟では、審理の途中で裁判所が和解を試みることがあり、当事者が離婚条件に合意すれば和解で解決できます。離婚だけでなく、親権、養育費、財産分与などの条件を含める場合は、履行できる内容か、記載に漏れがないかを確認することが重要です。

Q. 仕事を休まずに離婚裁判へ対応できますか

A. 弁護士へ依頼した場合、期日の種類や裁判所の運用によっては代理人が対応できる場面があります。ただし、当事者本人の事情を聴く本人尋問や、本人の意思確認が必要な和解期日など、出席を求められることがあります。欠席を自己判断せず、呼出状と裁判所・代理人の指示を確認してください。

まとめ|費用・期間・争点・証拠を同時に見通す

離婚裁判の裁判所費用には、申立手数料、郵便料、資料取得費等があります。弁護士へ依頼する場合は、これとは別に着手金・報酬金・実費・日当等を確認します。2024年に終局した離婚事件の全国平均審理期間は15.5か月ですが、判決まで争う事件や複数の争点がある事件は、さらに時間がかかる可能性があります。

大切なのは、費用と期間だけで判断せず、離婚後の生活、子どもの利益、財産、必要な証拠、和解できる条件まで一緒に整理することです。

岩澤法律事務所では、離婚調停後の訴訟提起、相手から届いた訴状への対応、親権・養育費・財産分与・慰謝料等を含む離婚問題のご相談に対応しています。現在の書類と期限が分かるものをお持ちいただくと、検討すべき順序を整理しやすくなります。

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このコラムの監修者

岩澤 千洋弁護士

岩澤法律事務所

岩澤 千洋弁護士宮崎県弁護士会所属

日々の生活で生じる悩みの多くは法的な問題に分析することができ、何かしらの法的な解決(目的地)を見つけることができます。まずは、お気軽にご相談ください。どのような問題であれ、何事も依頼者の方の立場利益を第一に考えて、できる限り依頼者の方の利益にかなう解決(目的地)に向けて最善の努力をいたします。

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