公開日:2026.08.12 更新日:2026.08.08

離婚時に住宅ローンが残る家はどうする?売却・名義変更・住み続ける方法

離婚時に住宅ローンが残る家はどうする?売却・名義変更・住み続ける方法

離婚時に持ち家と住宅ローンが残っていると、「子どものために住み続けたい」「売ってもローンを返し切れない」「家の名義とローン名義が違う」といった問題が重なります。

最初に、所有名義、ローンの債務者・保証人、残高、家の査定額を別々に確認してください。

夫婦間で「住む人」「返済する人」を決めても、金融機関との契約や不動産登記が自動的に変わるわけではありません。数字と契約関係を確認してから、売却または居住継続の案を比較します。

※本記事は2026年8月時点の一般的な情報です。ローン商品、金融機関、登記、税務、財産分与の扱いは個別に確認してください。

最初に確認する4つの情報

1. 不動産の所有名義

登記事項証明書で、土地・建物の所有者、持分、抵当権を確認します。固定資産税の納税通知書だけでは、現在の登記名義や抵当権を確認し切れません。

2. 住宅ローンの契約関係

金銭消費貸借契約書、返済予定表、保証委託契約等で、主債務者、連帯債務者、連帯保証人、担保提供者を確認します。「家の名義人」と「ローン債務者」は同じとは限りません。

3. ローン残高

金融機関の残高証明書や完済予定額を確認します。通常の残高と、売却日に一括返済する場合の元利金・手数料が異なることがあります。

4. 家の現在価値

不動産会社の査定を複数取得し、売却諸費用も見込みます。査定額は成約を保証する金額ではありません。必要に応じて不動産鑑定も検討します。

住宅ローンが残る家の売却・居住継続の選択肢

売却して完済できるアンダーローンの場合

家の売却見込額がローン残高と売却費用を上回る状態を、一般にアンダーローンと呼びます。売却代金からローン、仲介手数料、登記費用等を払い、残った金額を財産分与の対象として整理します。

売却には、媒介契約、内覧、売買契約、抵当権抹消、引渡しが必要です。離婚成立日と売却日がずれる場合は、売却まで誰が住み、誰が返済・税金・管理費・修繕費を負担するかを決めます。

売却前に一方が退去しても、ローン契約上の返済義務は残ります。売却益の分け方だけでなく、売却までの費用と価格決定方法も書面にします。

売却しても残債が出るオーバーローンの場合

売却見込額よりローン残高・費用が多い状態では、通常売却で抵当権を抹消するため、不足分を自己資金で補う必要があります。

補えない場合は、金融機関の同意を得た任意売却を検討することがあります。住宅金融支援機構は、返済継続が困難な場合の選択肢として任意売却を案内しています。通常の取引として売却するため、一般に競売より高値が期待されますが、必ず高く売れるわけではありません。

また、任意売却をしても残った債務が当然になくなるわけではありません。売却後の残債、返済計画、保証会社からの請求、信用情報への影響を確認します。金融機関へ無断で進めることはできません。

どちらかが住み続ける場合の注意点

ローン名義人が住み続ける

比較的契約関係を変えずに済みますが、家の価値からローン残高を差し引いた持分をどう清算するか、他方の共有持分や保証をどう外すかを検討します。共有名義を残すと、将来の売却や担保設定に双方の協力が必要になる可能性があります。

ローン名義人ではない側が住み続ける

元配偶者がローンを返済し、もう一方と子どもが住む形は、支払いが続く間は生活を維持できます。しかし、返済が止まれば家を失うおそれがあり、住む側が直接返済しても金融機関との債務者になるとは限りません。

住宅ローンは自己または親族の居住を前提とする商品もあります。転居・賃貸・所有権移転が契約へ与える影響は金融機関へ確認します。

「元配偶者が払うから大丈夫」という夫婦間の約束だけでは、延滞・売却・死亡・再婚等のリスクを解消できません。

名義変更・借換え・連帯保証の整理

フラット35の案内では、返済途中で住宅を他人へ譲渡すると原則として融資金全額の返済が必要で、離婚等の事情では金融機関へ相談するよう示しています。金融機関の承諾を得て債務を引き継げる場合もあります。

住み続ける側が単独で借換えを行い、元のローンを完済する方法がありますが、収入、年齢、物件価値、他の借入等の審査が必要で、必ず認められるわけではありません。

夫婦間で離婚協議書を作っても、金融機関が同意しない限り、連帯債務者や保証人は外れません。所有権だけを移転する前に、ローン契約の譲渡・用途変更条項と抵当権を確認します。

子どもと住み続ける合意を作るとき

子どもの転校を避けるため、「高校卒業まで住む」と合意することがあります。その場合は、少なくとも次を定めます。

  • 居住できる人と期間、退去条件
  • ローン、固定資産税、火災保険、修繕費、管理費の負担
  • 支払いが遅れた場合の通知と対応
  • 売却する時期、価格の決め方、仲介会社
  • 借換えが成立しなかった場合の代替案
  • 売却益・不足額の分担
  • 名義人の死亡、再婚、破産等が生じた場合

子どもの成長と住居の安定は重要ですが、返済可能性と将来の出口も同時に決めます。

選択肢を数字で比較する

感情だけで家を残すか決めず、売却案と居住継続案を同じ期間で比較します。

売却する案

予想売却価格から、ローン完済額、仲介手数料、登記費用、引越費用等を差し引きます。売却益が出る場合の分配、残債が出る場合の不足金負担を記載します。売却までの月数を仮定し、その間の返済・管理費も加えます。

住み続ける案

毎月のローン、固定資産税、管理費・修繕積立金、火災保険、修繕費を合計します。養育費や婚姻費用と住宅費をどのように調整するか、収入が減った場合にも返済できるかを試算します。将来売却するときの残高予測も確認します。

借換え・債務引受けの案

住み続ける側の単独収入で審査を受け、金利、返済期間、諸費用、団体信用生命保険を比較します。事前審査の結果だけで所有権移転を確定せず、本審査と契約条件を確認します。

見落としやすい費用と手続

マンションでは管理費・修繕積立金・駐車場、戸建てでは修繕・浄化槽・境界等の費用があります。固定資産税の納税義務者と夫婦間の負担者が異なる場合、納付書の送付先と精算方法も決めます。

火災保険、地震保険、団体信用生命保険の契約者・被保険者・保険金受取関係も確認します。名義や居住者が変わると変更手続が必要になることがあります。

不動産を財産分与で取得する場合、所有権移転登記、登録免許税、司法書士費用等が生じます。住所や氏名が変わった場合の登記も含め、司法書士・税理士・金融機関と役割を分けて進めます。

相談時に作る「家とローンの一枚表」

物件住所、所有持分、抵当権、債務者・保証人、残高、金利、月額、査定額、売却費用、居住者、固定費を一枚にまとめます。契約書が見つからない項目は空欄にせず、「金融機関へ照会」と記載します。

その上で、希望案、相手の希望、金融機関の回答、実現できない場合の代替案を並べます。法律相談ではこの表と登記事項証明書、ローン契約書、残高証明書、査定書を用意すると、財産分与と生活設計の論点を確認しやすくなります。

離婚時に避けたい住宅ローン対応

金融機関へ相談せず所有権を移す

夫婦間で財産分与が決まっても、ローン契約や抵当権の条件は別です。所有権移転を先行する前に、金融機関の承諾が必要かを確認します。

口約束だけで元配偶者へ返済を任せる

滞納を知る方法、返済証明、売却条件、退去時期がないと、問題が起きたときに対応が遅れます。少なくとも合意書へ具体的な義務と代替案を書きます。

査定を一社だけで決める

査定方法や売却条件で金額は変わります。媒介価格と実際の成約価格も同じではありません。複数の査定を比較し、売出価格の変更方法を決めます。

住宅ローンと養育費等を曖昧に相殺する

「ローンを払う代わりに養育費は不要」とだけ定めると、売却・借換え・完済後の扱いが不明です。住宅費負担、養育費、財産分与を項目ごとに示し、いつ見直すかを定めます。

金融機関・不動産会社・専門家へ相談する順番

まず登記とローン契約を確認し、不動産会社へ査定を依頼します。次に金融機関へ、所有権移転、債務引受け、借換え、転居が契約へ与える影響を確認します。離婚条件の交渉は、実行可能な回答と数字を基に進めます。

弁護士は財産分与、離婚協議書、支払いが止まった場合の条項を整理し、司法書士は登記、税理士は譲渡所得や税務を扱います。一つの専門家だけですべてが完了するとは限りません。売却期限や離婚届提出日を先に固定せず、各手続に必要な期間を確認して日程を組みます。

離婚協議書・公正証書へ入れる項目

不動産の表示、登記名義、ローン契約、残高、査定額を特定し、売却か居住継続かを明記します。売却の場合は、期限、最低価格、値下げ方法、費用、残金分配を決めます。

居住継続の場合は、所有権移転の時期、金融機関への相談、借換期限、返済証明の共有、滞納時の売却、退去条件を定めます。公正証書にしても、金融機関との契約を変更する効力が生じるわけではありません。

岩澤法律事務所の公開解決事例には、ローンが残る自宅の分与を含む条件で解決した事案があります。ただし、同じ解決が可能かは、相手の合意、支払能力、物件価値、金融機関との契約等によって異なり、結果を保証するものではありません。

よくある質問

Q. 離婚協議書で相手が払うと決めれば、銀行への返済義務はなくなりますか

A. いいえ。夫婦間の合意とローン契約は別です。金融機関が変更を承認しない限り、契約上の責任は残ります。

Q. 家の名義だけ、住み続ける側へ変えられますか

A. 所有権移転だけを先行すると契約上の問題が生じる可能性があります。金融機関へ相談し、債務引受け、借換え、完済、担保を確認してください。

Q. 売却価格よりローン残高が多い場合は売れませんか

A. 不足分を補う、金融機関の同意を得て任意売却する等を検討できます。任意売却後も残債が残ることがあります。

Q. 子どもが卒業するまで住み続ける合意はできますか

A. 夫婦間では合意できますが、滞納・売却・修繕費・税金・退去・借換え等まで決める必要があります。金融機関との契約は別です。

まとめ|家・ローン・生活を一つの表で整理する

住宅ローンが残る家は、登記名義、ローン当事者、残高、査定額を確認し、売却・居住継続・借換えの実現可能性を比較します。夫婦間合意だけで金融機関との契約が変わらない点が重要です。

家を残すか売るか、財産分与と生活設計を一緒に整理したい方は、岩澤法律事務所の離婚・男女問題相談の流れをご確認のうえ、相談予約フォームをご利用ください。

このコラムの監修者

岩澤 千洋弁護士

岩澤法律事務所

岩澤 千洋弁護士宮崎県弁護士会所属

日々の生活で生じる悩みの多くは法的な問題に分析することができ、何かしらの法的な解決(目的地)を見つけることができます。まずは、お気軽にご相談ください。どのような問題であれ、何事も依頼者の方の立場利益を第一に考えて、できる限り依頼者の方の利益にかなう解決(目的地)に向けて最善の努力をいたします。

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