公開日:2026.08.10 更新日:2026.08.08

離婚の財産分与は何が対象?預金・退職金・保険・不動産の分け方

離婚の財産分与は何が対象?預金・退職金・保険・不動産の分け方

離婚時の財産分与では、「相手名義の口座は対象外か」「婚姻前から使っている口座はどう分けるか」「保険や車も評価するのか」といった疑問が生じます。

財産分与の対象は名義だけで決まらず、婚姻中に夫婦の協力で取得・維持した財産かを確認します。

話合いを始める前に、財産の種類、名義、取得時期、別居時の残高や評価額、裏付け資料を一覧にすると、争点を整理しやすくなります。

※本記事は2026年8月時点の一般的な情報です。対象範囲、基準時、評価、分与割合は個別事情で異なります。

財産分与の対象は名義ではなく形成経緯で考える

財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して取得または維持した財産を、離婚時または離婚後に分ける制度です。法務省の案内も、夫婦の協力で形成された財産であれば、名義人にかかわらず対象になり得ると説明しています。

例えば、婚姻中に夫の収入で購入し夫単独名義となっている家でも、妻が家事や育児を担って生活を支えていた場合、実質的な夫婦の財産として扱われ得ます。

一方、名義が共同だから必ず全額が共有財産というわけでもありません。頭金に婚姻前の預金や親からの贈与が含まれる場合、その出所を資料で確認します。

対象になりやすい財産・なりにくい財産

対象になりやすい共有財産

  • 婚姻中の収入から貯めた預金・現金
  • 婚姻中に加入し形成した保険の解約返戻金
  • 自動車、不動産、家具・貴金属等
  • 株式、投資信託、暗号資産、持株会
  • 退職金のうち婚姻期間に対応する部分
  • 夫婦の生活や財産形成のための債務

原則として対象になりにくい特有財産

  • 婚姻前から所有していた預金、不動産等
  • 婚姻中に相続や贈与で取得した財産
  • 社会通念上、一方の専用品とみられる衣類・装身具等

特有財産だと主張する側は、取得時期と原資を示す資料を早めに確保することが重要です。 婚姻前預金と婚姻後の給与が同じ口座で長期間混在していると、区別が難しくなります。

財産分与の対象になりやすい財産・なりにくい財産

預金・生命保険・車・不動産の分け方

預金・現金

金融機関名、支店、口座種別、名義、基準時の残高を一覧にします。通帳表紙・明細、取引履歴、残高証明書を用意します。別居直前に大きな出金がある場合、生活費、税金、借入返済、財産隠し等のどれかを使途資料で確認します。

子ども名義の預金も、名義だけで判断しません。お年玉や贈与を貯めたものか、夫婦が資産管理のために入金したものかを見ます。

生命保険・学資保険

保険会社、契約者、被保険者、受取人、契約日、保険料の支払口座、基準時の解約返戻金を確認します。死亡保険金額ではなく、通常は解約返戻金相当額を資料にすることが多いです。実際に解約するか、契約を一方が引き継いで他方へ調整金を払うかは別に決めます。

車検証、購入契約、ローン残高、査定書を用意します。現在の査定額からローン残高を踏まえて価値を検討し、売却、名義変更、どちらかの取得を決めます。残価設定型ローンや所有権留保がある場合は、販売会社・金融機関との契約確認が必要です。

不動産

登記事項証明書、固定資産評価証明書、購入契約書、住宅ローン契約書、残高証明書、査定書をそろえます。固定資産税評価額と市場での売却見込額は同じではありません。複数社の査定や不動産鑑定が必要な場合もあります。

退職金・有価証券・年金・負債の注意点

退職金は、支給の確実性、退職までの期間、婚姻期間に対応する部分等を確認します。勤務先の退職金規程、現時点の自己都合退職額証明等が資料になります。

株式・投資信託・暗号資産は、銘柄・数量と評価時点を明確にします。価格が変動するため、どの時点の価格を使うかを決めます。売却すれば税金や手数料が生じることにも注意します。

厚生年金等の分割は、預金等の財産分与とは別の手続です。情報通知書を取得し、按分割合と請求期限を確認します。

住宅ローン、車のローン、事業借入、カード残高等の債務は、使途と財産との関係を確認します。一方が個人的な浪費やギャンブルのために作った債務まで、当然に夫婦で半分ずつ負担するとは限りません。

財産の基準時と評価時を確認する

何が財産分与の対象かを区切る「基準時」と、対象財産をいくらと評価するかの「評価時」は分けて考えます。別居により夫婦の経済的協力関係が終了した場合、別居時が重要な基準になることが多いですが、同居継続、家計の分離、事業財産等によって争いが生じます。

預金は基準時残高、不動産や株式は分与時に近い評価を使うなど、財産の性質に応じた整理が必要です。日付のない財産一覧ではなく、「いつの残高・価格か」を必ず記載します。

財産を開示してもらえない場合

まず、把握している金融機関、勤務先、保険会社、不動産、車等を一覧にし、相手へ資料提出を求めます。郵便物、家計記録、振込履歴等から存在を確認できる場合がありますが、相手のアカウントへ無断でアクセスすることは避けます。

離婚調停・財産分与調停では、双方へ資料提出を求めて整理します。訴訟・審判等では、必要性と特定の程度に応じて調査嘱託や文書送付嘱託等を検討する場面があります。裁判所がすべての財産を自動的に調査してくれるわけではないため、手掛かりを残すことが重要です。

財産目録はどのように作るか

財産目録は、夫側・妻側に分けるだけでなく、次の列を設けると比較しやすくなります。

  • 財産の種類と内容
  • 名義人・契約者
  • 取得日・契約日
  • 婚姻前の原資や相続・贈与の有無
  • 基準時の残高・数量
  • 現在の評価額
  • ローン・解約費用・税金等
  • 裏付け資料の名称
  • 双方の主張と争いの有無

金額が分からない項目を削除せず、「評価資料待ち」と残します。保険証券はあるが解約返戻金が不明、勤務先は分かるが退職金額が不明という状態も、調査すべき項目として見えるようになります。

財産ごとに個別に半分へ分ける必要はありません。一方が家を取得し、他方が預金を多く取得するなど、全体の価値を踏まえて調整金で清算する方法もあります。現物を取得する人がローンや維持費を負担できるかも確認します。

分け方を決めるときの選択肢

預金は振込み、株式は売却代金の分配または移管、車や不動産は売却または一方の取得、保険は解約または契約継続と調整金、といった方法があります。価格変動のある財産は、評価日と実行期限を決めます。

分割払いの調整金を定める場合は、金額、支払日、振込先、遅延時の取扱い、担保、期限の利益喪失等を検討します。離婚届を出す日、所有権移転、ローン手続、鍵・車両の引渡しの順序も書面にします。

税金・諸費用も確認する

財産分与は常に無税とは限りません。分与が過大と評価される場合、不動産の含み益、所有権移転登記、売却等で税金や費用が生じる可能性があります。税務上の扱いは税理士や税務署へ確認し、手取り額で比較します。

合意書は財産を特定する

「財産を半分にする」だけでは、対象口座、残高、振込期限が不明です。不動産は所在・地番・家屋番号、預金は金融機関・支店・口座、車は登録番号等を用いて特定し、清算条項がどの範囲に及ぶか確認します。

財産分与でよくある見落とし

現在残高だけを見てしまう

別居後に給与や生活費が動いた口座では、現在残高だけでは夫婦の協力で形成した範囲を確認できません。基準時前後の取引履歴を見て、大口出金の使途を整理します。

名義のない財産を忘れる

電子マネー、ポイント、暗号資産、ネット証券、勤務先の持株会、財形貯蓄、社内預金等は郵便物が少なく、見落とされやすい財産です。給与明細、確定申告書、メール等から確認します。

財産価値と手取り額を混同する

不動産や株式を売却すれば、仲介手数料、税金、ローン返済等が生じます。額面だけで比較せず、売却する場合と現物取得する場合の費用を分けます。

清算条項を先に入れてしまう

未確認の財産があるまま「互いに一切請求しない」と合意すると、後で請求できるか問題になります。資料開示と財産目録の確認を終え、清算条項の対象を理解してから署名します。

相談するタイミング

離婚届を出す前であれば、離婚条件の一つとして財産分与を同時に協議できます。相手から財産一覧や合意書案を示された段階、別居前に資料を確認できる段階は、相談に適した時期です。

離婚後でも期限内は請求できますが、時間の経過で口座履歴や査定資料を集めにくくなることがあります。相手が財産を処分しそう、期限が近い、会社経営・海外資産・相続財産が混在する場合は、早めに保全の必要性も含めて確認します。書類がすべてそろうまで待たず、分かっている財産と未確認項目を持参してください。

2026年4月から請求期限は原則5年

裁判所の財産分与請求調停の案内によると、2026年4月1日以後に離婚した場合、離婚日の翌日から起算して5年を経過すると、財産分与の調停・審判を申し立てられません。

2026年4月1日より前に離婚した場合は、従前どおり原則2年です。現在はすべての離婚で5年になったわけではなく、離婚日で期限が分かれます。

期限が迫ってからでは、財産調査や評価に十分な時間を取れない可能性があります。協議中でも期限を管理してください。

よくある質問

Q. 相手名義の預金も財産分与の対象ですか

A. 婚姻中に夫婦の協力で形成・維持した預金であれば、相手の単独名義でも対象になり得ます。婚姻前の残高、相続・贈与、別居時の残高を資料で分けます。

Q. 財産分与は必ず半分ずつですか

A. 夫婦の寄与が明らかに異ならないときは相等しいものとされますが、常に機械的な二分の一とは限りません。形成・維持への寄与や一切の事情を確認します。

Q. 住宅ローンが家の価値より多い場合も家を半分にしますか

A. 査定額とローン残高、他の財産や債務、売却・居住の方針を整理します。単純にマイナス額を折半するとは限りません。

Q. 離婚後いつまで財産分与を請求できますか

A. 2026年4月1日以後の離婚は原則5年、同日前の離婚は原則2年です。早めに離婚日と資料を確認してください。

まとめ|財産一覧と裏付け資料を同時に作る

財産分与は、財産名、名義、取得時期、基準時の残高、現在の評価、債務、資料を一つの表にまとめると見通しを立てやすくなります。名義だけで除外せず、特有財産の原資も資料で分けます。

財産の範囲や評価、期限で迷う場合は、岩澤法律事務所の離婚・男女問題相談の流れをご確認のうえ、相談予約フォームをご利用ください。

このコラムの監修者

岩澤 千洋弁護士

岩澤法律事務所

岩澤 千洋弁護士宮崎県弁護士会所属

日々の生活で生じる悩みの多くは法的な問題に分析することができ、何かしらの法的な解決(目的地)を見つけることができます。まずは、お気軽にご相談ください。どのような問題であれ、何事も依頼者の方の立場利益を第一に考えて、できる限り依頼者の方の利益にかなう解決(目的地)に向けて最善の努力をいたします。

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