2025.05.24 2025.05.24
熟年離婚を考える女性へ~50代からの新生活と年金問題~

「もう限界かもしれない…」そんな思いを抱えながら日々を過ごしている50代の女性は少なくありません。
子育てが一段落し、これからの人生を考えたとき、熟年離婚という選択肢が現実味を帯びてくることもあるでしょう。
しかし、長年連れ添った相手との離婚は、若い頃とは違った課題があります。
特に気になるのが年金問題ですよね。
この記事では、熟年離婚を考える女性が知っておくべき年金分割の仕組みから、50代からの新しい生活設計まで、法律事務所の経験を踏まえながら詳しく解説していきます。
熟年離婚が増えている理由と50代女性の現状
なぜ今、熟年離婚を選ぶ女性が増えているのか
まず気になる方も多いと思いますが、実は熟年離婚は確実に増加しているのが現状です。
厚生労働省の統計によると、同居期間20年以上の離婚件数は1985年の2万434件から2020年には3万8980件と、35年でほぼ倍増しています。
また、50代前半の離婚率を見ると、男性は1990年の1.74‰が2020年には4.64‰に、女性は1.22‰が3.75‰に大幅上昇しました。
これは毎年、配偶者のいる50代前半の女性1,000人中約4人が離婚しているという計算になります。
この背景には、いくつかの社会的要因があります。
女性の経済的自立の進展が大きな要因の一つです。
90年代以降、パートや派遣など女性が社会進出する機会が増加し、女性自身の経済力も向上しました。
また、2007年4月からは「年金分割制度」が開始され、婚姻期間中の年金を分割できるようになったことも、熟年離婚を後押しする要因となっています。
さらに、人生100年時代という考え方の浸透も影響しています。
50代はまだ人生の折り返し地点。
残りの30年、40年を自分らしく生きたいと考える女性が増えているのです。
50代女性が直面する熟年離婚の特有の悩み
若い世代の離婚とは異なり、50代の女性が熟年離婚を考える際には特有の悩みがあります。
まず挙げられるのが経済的な不安です。
長年専業主婦やパート勤務だった場合、離婚後の収入源に不安を感じるのは当然のことです。
また、老後の生活設計という重要な問題もあります。
年金はどうなるのか、住まいはどうするのか、医療費は大丈夫なのか…考えることは山積みです。
さらに、親の介護問題も50代女性特有の課題です。
離婚により経済的・時間的な余裕がなくなると、親の介護にも影響が出る可能性があります。
世間体への配慮で悩む方も多いでしょう。
「今更離婚なんて…」「周りにどう思われるか」といった気持ちを抱えながら、一歩を踏み出せずにいる女性もいらっしゃいます。
しかし、これらの悩みは決して乗り越えられないものではありません。
適切な準備と正しい知識があれば、50代からでも新しい人生をスタートすることは十分可能です。
熟年離婚で最も重要な年金分割制度を理解しよう
年金分割の基本的な仕組み
年金分割について「難しそう…」と感じる方も多いと思いますが、実は基本を押さえれば理解できる制度です。
年金分割とは、離婚時に婚姻期間中の厚生年金記録を分割して、それぞれの年金とすることができる制度です。
重要なのは、将来受け取る年金額を単純に半分にするものではないという点です。
分割されるのは「年金保険料の納付記録」であり、この記録をもとに将来の年金額が計算されることになります。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
分割方法 | 対象期間 | 分割割合 | 相手の同意 |
---|---|---|---|
合意分割 | 婚姻期間全体 | 話し合いで決定(上限50%) | 必要 |
3号分割 | 2008年4月以降の3号被保険者期間 | 自動的に50% | 不要 |
注意すべき点は、年金分割の対象となるのは厚生年金のみということです。
国民年金や国民年金基金などは対象外となります。
また、夫婦どちらも国民年金のみに加入していた場合(自営業夫婦など)は、年金分割制度を利用することができません。
年金分割でもらえる金額の目安と計算方法
「実際にどれくらいの年金がもらえるの?」という疑問を持たれる方がほとんどでしょう。
厚生労働省のデータによると、年金分割による年間の増加額は以下の通りです。
- 合意分割の場合:約3万円(3号分割含む)
- 3号分割のみの場合:約5千円
正直なところ、「思っていたより少ない…」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、これは統計上の平均値であり、婚姻期間や夫の収入によって大きく変わります。
具体的な計算方法を理解するためには、年金事務所での情報提供請求が重要です。
まずは「年金分割のための情報通知書」を取得しましょう。
この通知書には、分割の対象となる期間や標準報酬総額などが記載されています。
50歳以上の方であれば、年金分割後の見込額も知らせてもらえるので、より具体的な検討が可能になります。
計算の基本的な考え方は以下の通りです。
(夫の対象期間標準報酬総額+妻の対象期間標準報酬総額)×按分割合×給付乗率
ただし、正確な計算は専門的になるため、年金事務所や弁護士に相談することをおすすめします。
期待していたほど多くない場合もありますが、それでも老後の生活を少しでも安定させるために重要な制度です。
年金分割の手続きと注意点
年金分割の手続きには絶対に守らなければならない期限があります。
離婚後2年以内という期限を過ぎると、原則として年金分割を請求することはできません。
また、元配偶者が死亡した場合は、死亡後1か月以内に手続きを行う必要があります。
手続きの流れは以下の通りです。
- 情報通知書の取得(年金事務所で申請)
- 分割割合の合意(話し合いまたは調停・審判)
- 年金分割の請求(年金事務所で手続き)
合意分割の場合、必要な書類は次のようなものです。
- 標準報酬改定請求書
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 戸籍謄本(婚姻期間等を明らかにできるもの)
- 按分割合を明らかにできる書類(公正証書、調停調書など)
一方、3号分割の場合は、第3号被保険者であった方が単独で手続きできるため、より簡単です。
ただし、事実婚の場合や複雑なケースでは追加書類が必要となることもあります。
手続きを忘れたり、期限を過ぎてしまったりすると、将来受け取れる年金に大きな影響が出てしまいます。
離婚を決意したら、速やかに年金分割についても検討を始めましょう。
離婚後の新生活に向けた準備と心構え
経済的自立のための準備
50代からの経済的自立について「今から働くなんて…」という不安を抱える方も多いでしょう。
しかし、実際には50代女性でも新しいキャリアを築くことは十分可能です。
まず考えたいのがこれまでの経験を活かせる仕事です。
長年の家事経験は、介護職や家事代行サービスで大いに活用できます。
子育て経験は保育関連の仕事で重宝されます。
事務経験があれば、パートから正社員への道筋も見えてきます。
50代女性におすすめの職種をご紹介します。
- 介護職:人手不足で年齢を問わない求人が多い
- 家事代行:これまでの経験が直接活かせる
- 清掃業:効率的に作業できる人に向いている
- 接客業:人生経験豊富な方が歓迎される職場も多い
- 製造・軽作業:決められた業務を着実にこなせる方に最適
資格取得も有効な選択肢です。
介護職員初任者研修、登録販売者、簿記検定などは、50代からでも比較的取得しやすく、就職に直結しやすい資格です。
宮崎県内でも、ハローワークや県の就労支援機関で様々なサポートを受けることができます。
求職者支援制度を利用すれば、月10万円の給付金を受けながら無料の職業訓練を受講することも可能です。
「できるかどうか不安…」という気持ちは当然ですが、小さな一歩から始めてみることが大切です。
関連: 求職者支援制度のご案内〜再就職・転職・スキルアップを目指す皆様へ〜
住まいと生活費の見直し
離婚後の住居問題は、多くの女性が直面する重要な課題です。
選択肢としては以下のようなものがあります。
持ち家の場合
財産分与の一環として、家をどうするか話し合う必要があります。
住み続ける場合は、住宅ローンの名義変更や支払い能力を慎重に検討しましょう。
売却して現金化し、それを分け合う方法もあります。
賃貸の場合
家賃を一人で負担できるか、収入に見合った物件かを検証が必要です。
場合によっては、より安い物件への引っ越しも検討しましょう。
実家に戻る選択肢
経済的負担を軽減できる一方で、親の介護問題なども考慮に入れる必要があります。
一人暮らしの生活費の目安(月額)
項目 | 金額の目安 |
---|---|
住居費 | 50,000~80,000円 |
食費 | 30,000~40,000円 |
光熱費 | 15,000~20,000円 |
通信費 | 8,000~12,000円 |
保険料 | 10,000~15,000円 |
その他 | 20,000~30,000円 |
合計 | 133,000~197,000円 |
この金額を参考に、現実的な生活設計を立ててみましょう。
年金分割や財産分与でどれくらいの収入が見込めるか、働いてどれくらい稼げそうかを総合的に考えることが重要です。
精神的な支えとなるネットワークづくり
離婚後の孤独感は、多くの方が経験する自然な感情です。
しかし、「一人じゃない」ということを忘れないでください。
新しい人間関係の構築は、50代からでも十分可能です。
地域のサークル活動、ボランティア、習い事などに参加することで、同じような境遇の方や新しい友人と出会うことができます。
宮崎県内にも、女性を支援する様々な団体やコミュニティが存在します。
主な支援機関・コミュニティ
- 宮崎県男女共同参画センター
- 各市町村の女性相談窓口
- 離婚経験者の自助グループ
- 地域のNPO法人
- 公民館での各種講座
SNSを活用して、同じような経験をした方とのつながりを見つけることも有効です。
ただし、個人情報の取り扱いには十分注意しましょう。
心の健康を保つために大切なこと
規則正しい生活リズムを維持する、適度な運動を心がける、趣味や楽しみを見つける、必要に応じてカウンセリングを受けることなども大切です。
離婚は人生の大きな変化ですが、同時に新しい可能性の始まりでもあります。
焦らず、自分のペースで新しい生活を築いていきましょう。
熟年離婚の手続きと専門家への相談タイミング
協議離婚vs調停離婚vs裁判離婚
離婚にはいくつかの方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
協議離婚は日本の離婚の約90%を占める最も一般的な方法です。
夫婦の話し合いで合意し、離婚届を提出するだけで成立します。
時間も費用もかからず、最も簡便な方法と言えるでしょう。
しかし、熟年離婚の場合は財産分与が複雑になりがちなため、十分な話し合いが必要です。
調停離婚は家庭裁判所の調停委員が仲介して行う離婚です。
第三者が介入するため、感情的な対立が激しい場合でも冷静に話し合いを進めることができます。
ただし、月1回程度のペースで数か月かかることが多く、平日に裁判所に出向く必要があります。
裁判離婚は最終手段として行われる方法で、全離婚の1%未満という稀なケースです。
裁判では法定離婚事由(不貞行為、悪意の遺棄、生死不明、精神病、その他婚姻継続困難な重大事由)の証明が必要になります。
離婚方法 | 期間 | 費用 | 特徴 |
---|---|---|---|
協議離婚 | 数日~数か月 | ほぼ無料 | 最も簡便だが後でトラブルの可能性 |
調停離婚 | 数か月~1年 | 数万円 | 第三者の仲介で公平な解決 |
裁判離婚 | 1年~2年 | 数十万円~ | 強制的な解決だが時間と費用がかかる |
熟年離婚では、財産分与や年金分割など複雑な問題が絡むため、たとえ協議離婚であっても専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
弁護士に相談すべきタイミングと準備
「いつ弁護士に相談すればいいの?」という疑問を抱く方も多いでしょう。
答えは「離婚を具体的に考え始めた段階」です。
早めの相談により、より有利な条件で離婚できる可能性が高まります。
弁護士相談をおすすめするタイミング
- 離婚を具体的に検討し始めたとき
- 財産の把握や分割方法で悩んだとき
- 年金分割の手続きが複雑に感じたとき
- 相手が離婚に応じない、条件で揉めているとき
- DVやモラハラがあるとき
相談前に準備しておくべき書類
- 戸籍謄本(婚姻の事実と期間が分かるもの)
- 家計の収支が分かる資料
- 財産に関する資料(通帳、不動産登記簿、保険証券など)
- 年金に関する書類(ねんきん定期便など)
- 離婚原因に関する証拠(不倫、DV等がある場合)
岩澤法律事務所では初回相談を無料で行っており、離婚を考える女性の相談を多数お受けしています。
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初回相談で確認できること
相談では、あなたの状況に応じた離婚方法の選択、財産分与や年金分割の見込額、手続きの流れ、解決までの期間や費用などについて説明を受けることができます。
「相談したら必ず依頼しなければならない」ということはありません。
まずは情報収集のつもりで、気軽に相談してみることが大切です。
専門家のアドバイスを受けることで、漠然とした不安が具体的な対策に変わり、前向きに進むことができるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q: 専業主婦でも熟年離婚後に生活していけますか?
A: 長年専業主婦だった方でも、年金分割制度や財産分与を活用することで生活基盤を築くことは可能です。
ただし、現実的な生活設計は不可欠です。
まずは年金見込額を確認し、不足分をどう補うか検討しましょう。
50代からでも始められる仕事はたくさんあります。
介護職や家事代行、清掃業など、これまでの人生経験を活かせる分野で活躍している方も多くいらっしゃいます。
Q: 夫が離婚に応じてくれない場合はどうすればいいですか?
A: 話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所での調停を申し立てることができます。
調停でも合意に至らない場合は裁判という選択肢もあります。
ただし、時間と労力がかかるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
調停では調停委員が中立的な立場で話し合いを仲介してくれるので、感情的になりがちな夫婦間でも冷静な解決が期待できます。
Q: 年金分割をすると夫の年金はどうなりますか?
A: 年金分割は婚姻期間中の厚生年金記録を分割する制度です。
夫の年金が減る分、妻の年金が増えることになります。
ただし、夫の老後の生活も考慮した話し合いが大切です。
分割により夫の年金は減りますが、それまで妻が家事や育児で家庭を支えてきた貢献に対する正当な対価と考えることができます。
Q: 離婚後も今の家に住み続けることはできますか?
A: 持ち家の場合、財産分与の一環として検討されます。
ローンの有無、名義人、今後の支払い能力などを総合的に判断する必要があります。
具体的な解決策は個別の事情によって異なるため、専門家への相談が重要です。
住み続ける場合は、住宅ローンの名義変更や保証人の問題、固定資産税の支払いなども含めて検討する必要があります。
Q: 熟年離婚で慰謝料はもらえますか?
A: 慰謝料は相手方に有責事由(不貞行為、DVなど)がある場合に請求できます。
ただし、長年の結婚生活では証拠集めが困難な場合も多くあります。
財産分与と合わせて総合的に検討することが大切です。
熟年離婚の慰謝料相場は、不貞行為で100万~300万円、DVや悪意の遺棄で50万~300万円程度とされています。
Q: 離婚を決意する前に試しておくべきことはありますか?
A: 別居という選択肢もあります。
一定期間離れて暮らすことで、本当に離婚が必要か冷静に判断できます。
また、カウンセリングを受けることも有効です。
ただし、別居期間も婚姻費用の問題が生じるため、事前の準備は必要です。
まずは信頼できる家族や友人に相談したり、専門家の意見を聞いたりして、慎重に検討することをおすすめします。
まとめ
熟年離婚は人生の大きな決断です。
50代という年齢で新しい人生をスタートすることに不安を感じるのは当然のことです。
でも、あなたには残り30年、40年という時間があります。
その時間を自分らしく生きるために、今動き出すことは決して遅くありません。
年金分割制度をはじめとした法的な知識を身につけ、経済的な準備を整えることで、不安は少しずつ解消されていくはずです。
一人で悩まず、まずは専門家に相談してみましょう。
宮崎の岩澤法律事務所では、熟年離婚を考える女性の相談を多数お受けしています。
初回相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
あなたの新しい人生の第一歩を、私たちがサポートします。
人生100年時代において、50代はまだまだ新しい挑戦ができる年齢です。
適切な準備と正しい知識があれば、きっと充実した第二の人生を歩むことができるでしょう。
このコラムの監修者

岩澤法律事務所
岩澤 千洋弁護士宮崎県弁護士会所属
日々の生活で生じる悩みの多くは法的な問題に分析することができ、何かしらの法的な解決(目的地)を見つけることができます。まずは、お気軽にご相談ください。どのような問題であれ、何事も依頼者の方の立場利益を第一に考えて、できる限り依頼者の方の利益にかなう解決(目的地)に向けて最善の努力をいたします。