公開日:2026.09.02
施行前に離婚した場合も共同親権に変更できる?親権者変更調停の流れ

2026年4月1日から、離婚後の親権者を父母双方とする「共同親権」と、父母の一方だけを親権者とする「単独親権」のいずれかを選べる制度が始まりました。
では、制度が始まる前に離婚し、現在は単独親権となっている場合、共同親権へ変更できるのでしょうか。
2026年4月1日より前に離婚した父母も、改正法施行後は共同親権への変更を家庭裁判所へ申し立てられます。ただし、自動的に変更されるものではなく、元夫婦が合意している場合も親権者変更調停または審判が必要です。
本記事では、施行前に離婚した方が共同親権への変更を検討するときの判断基準、手続、費用、必要書類、成立後の届出を、2026年9月2日時点の裁判所・法務省の案内に基づいて解説します。
※本記事は一般的な法制度の解説です。共同親権への変更が適切か、認められる見込みがあるかは個別事情によって異なります。
目次
施行前に離婚した父母も共同親権への変更を申し立てられる
2026年4月1日より前の制度では、未成年の子がいる父母が離婚するとき、父母の一方を親権者とする必要がありました。そのため、施行前に離婚した家庭では、現在も父母のどちらか一方が親権者となっています。
改正法の施行後は、こうした父母も、父母双方を親権者とする変更を家庭裁判所へ申し立てることができます。
ここでいう「変更」は、過去の離婚時の判断が当然に誤りとなるという意味ではありません。現在の親権者を定めた経緯、その後の養育状況、父母と子どもの関係、生活環境の変化などを改めて確認し、今後の子の利益にかなうかを判断する手続です。
また、共同親権と単独親権のどちらか一方が法律上の原則とされているわけではありません。制度が始まったことだけを理由に、単独親権から共同親権へ変更しなければならないわけでもありません。
自動変更ではなく、父母の合意があっても家庭裁判所の手続が必要
離婚時に共同親権を選ぶ場合と、離婚後に親権者を変更する場合では、手続が異なります。
すでに離婚が成立している場合、元夫婦が「共同親権に変更しよう」と合意しても、合意書の作成や市区町村への届出だけでは変更できません。家庭裁判所へ親権者変更調停を申し立て、調停が成立するか、審判が確定する必要があります。
父母の合意は重要な事情ですが、親権は子どもの利益のための制度であるため、父母の希望だけで変更することはできません。
調停では家庭裁判所の調停委員を介して話し合います。話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合は審判へ移行し、裁判官が判断します。相手方が行方不明などで調停を進められない場合には、審判を申し立てることが考えられます。
共同親権への変更で家庭裁判所が確認する事情
家庭裁判所は「共同親権を希望している」という一点だけでなく、子どもの健全な成長に役立つ変更かを確認します。
裁判所の案内では、主に次のような事情が挙げられています。
- 離婚時に現在の親権者を定めた協議・調停等の経過
- 親権者を定めた後に生じた事情の変化
- 現在までの養育・監護の状況
- 父母それぞれと子どもの関係
- 父母間で必要な情報共有や意思決定ができるか
- 父母双方の経済状況、住居、家庭環境
- 子どもの年齢、性格、就学状況、生活環境
- 子どもの意見・意向や変更による心理的負担
- DV、虐待、威圧的言動など安全上の問題
現在の監護が安定している場合、親権者の変更によって学校生活や医療、居所、日常の意思決定へどのような影響が出るかも整理が必要です。

共同親権への変更が認められない場合
共同親権への変更を申し立てられることと、変更が認められることは同じではありません。
裁判所が次の事情を認める場合は、必ず単独親権とされ、共同親権への変更は行われません。
- 父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある
- DV等の有無や協議が調わない理由などから、父母が共同して親権を行うことが困難である
- 父母双方を親権者とすることで、その他の理由により子の利益を害する
DV等には身体的暴力だけでなく、精神的・経済的・性的な暴力も含まれます。「元配偶者と連絡が取れる」という外形だけでなく、対等に話し合えるか、威圧や支配が続いていないか、子どもが負担を受けないかを具体的に確認します。
安全上の不安がある場合は、共同親権について当事者間で直接話し合うことより、相談先の確保や住所・情報の保護を優先してください。
親権者変更調停の申立てから変更までの流れ
1.変更を求める理由と子どもの生活を整理する
親権者変更は、一般的には父または母が申し立てます。申立て前に、なぜ今変更が必要なのか、変更後に子どもがどこで暮らし、日常の監護を誰が担うのかを整理します。
親権者を共同にすることと、監護を父母が半分ずつ交替することは同じではありません。主な生活場所、親子交流、養育費、学校・医療情報の共有方法も分けて検討します。
2.相手方住所地の家庭裁判所へ申し立てる
申立先は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。当事者が合意した家庭裁判所へ申し立てることもできます。
全国共通の裁判所案内では、費用は子ども1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便料です。郵便料は裁判所ごとに異なるため、申立先へ確認します。
標準的な必要書類は、申立書、申立人・相手方・未成年者の戸籍謄本、事情説明書、進行に関する照会回答書などです。個別の事情に応じて追加資料を求められることがあります。
3.調停で子の利益を中心に話し合う
調停では、変更を希望する事情、現在の親権者の意向、これまでの養育状況、双方の家庭環境、子どもの生活状況などを確認します。
父母間で合意できた場合も、裁判所はその内容が子の利益にかなうかを確認します。調停が成立すれば、親権者変更の内容が調停調書に記載されます。
4.合意できなければ審判で裁判官が判断する
調停が不成立になると審判へ移行します。審判では、離婚時に親権者を定めた経過、その後の事情の変化、現在の養育状況などを踏まえ、裁判官が変更の可否と共同・単独の別を判断します。
5.成立・確定後に市区町村へ届け出る
親権者変更の調停が成立したとき、または変更の審判が確定したときは、届出義務のある親権者が、成立・確定の日から10日以内に市区町村役場へ届け出ます。
調停調書謄本、審判書謄本・確定証明書、戸籍謄本などが必要になる場合があるため、届出先へ確認してください。
宮崎家庭裁判所へ申し立てる場合の必要書類
宮崎家庭裁判所は、親権者変更調停について、全国共通案内に加えて次の書類を案内しています。
- 申立書3通(裁判所用・相手方用・申立人控え用)
- 事情説明書1通
- 送達場所届出・非開示希望申出1通
- 進行連絡メモ1通
- 子どもが15歳以上で同意がある場合の意見書
- 申立人・相手方・子どもの戸籍謄本各1通(3か月以内に発行されたもの)
申立書には、相手方に開示できない住所を書かないよう注意が必要です。提出書類に相手方へ知られたくない情報がある場合のマスキングや非開示希望申出についても案内されています。また、マイナンバーが記載された書面は提出しないよう示されています。
書式や必要部数は変更される可能性があるため、実際の申立て前に宮崎家庭裁判所の案内を確認してください。
共同親権への変更前に決めておきたい事項
共同親権へ変更した後は、子どもに重大な影響を与える事項や財産管理などを、原則として父母が共同で決めます。一方、日常の監護・教育に関する行為や、子の利益のために急迫の事情がある場合は、一方で対応できることがあります。
変更後の紛争を減らすため、次の事項を具体的に整理しておくことが重要です。
- 子どもの主な生活場所と日常の監護を担う人
- 進学、転居、重要な医療を話し合う方法
- 学校・医療情報を共有する範囲と方法
- 緊急時の連絡方法と事後共有
- 親子交流の日程、送迎、連絡方法
- 養育費と教育費・医療費等の分担
- 意見が一致しない場合に利用する調停・審判等
共同親権へ変更しても、子どもが父母の家を交互に住むことや、すべての事項を毎回二人で決めることが当然に義務付けられるわけではありません。
ただし、制度上共同決定が必要な重要事項を、父母の私的な合意だけで恒常的に一方へ丸投げできるとは限りません。実際の生活設計と親権行使のルールを分けて確認してください。
よくある質問
Q. 2026年4月1日より前に離婚した場合も共同親権へ変更できますか
A. 改正法施行後は、施行前に離婚した父母も、父母双方を親権者とする変更を家庭裁判所へ申し立てられます。ただし、申立てをすれば必ず共同親権になるわけではなく、子の利益を中心に判断されます。
Q. 元夫婦が合意していれば役所への届出だけで変更できますか
A. できません。離婚後の親権者変更は、父母が合意している場合でも、家庭裁判所の調停または審判を経る必要があります。成立または確定後に市区町村へ届出をします。
Q. 共同親権へ変更すると子どもは父母の家を交互に住むことになりますか
A. 必ずしも交互に監護する必要はありません。親権者、監護者、主な生活場所、親子交流、養育費は関連しますが同じ問題ではないため、子どもの生活に合わせて個別に整理します。
Q. 相手が共同親権への変更に反対した場合はどうなりますか
A. 調停で合意できなければ審判へ移行し、裁判官が判断します。従前の親権者指定の経過、離婚後の事情の変化、養育状況、父母・子の関係、安全性などが確認されます。
Q. 変更が認められた後に必要な手続はありますか
A. 調停成立または審判確定の日から10日以内に、市区町村役場へ親権者変更の届出をする必要があります。必要書類は届出先の役場へ確認してください。
まとめ|共同親権への変更は「制度が始まったから」ではなく子の利益から考える
2026年4月1日より前に離婚した父母も、施行後は単独親権から共同親権への変更を申し立てられます。しかし、自動変更ではなく、父母が合意している場合も家庭裁判所の手続が必要です。
変更を検討するときは、共同親権という名称だけでなく、現在の養育状況、子どもの生活と意向、父母が安全かつ対等に意思決定できるか、変更後の学校・医療・転居等をどのように決めるかまで具体化することが大切です。
岩澤法律事務所は、宮崎市橘通西にある法律事務所です。施行前に離婚した方の親権者変更について、現在の養育状況と資料を確認し、申立ての必要性や進め方を整理します。離婚・男女問題と相談の流れをご確認のうえ、お問い合わせフォームからご相談ください。
このコラムの監修者
岩澤法律事務所
岩澤 千洋弁護士宮崎県弁護士会所属
日々の生活で生じる悩みの多くは法的な問題に分析することができ、何かしらの法的な解決(目的地)を見つけることができます。まずは、お気軽にご相談ください。どのような問題であれ、何事も依頼者の方の立場利益を第一に考えて、できる限り依頼者の方の利益にかなう解決(目的地)に向けて最善の努力をいたします。