公開日:2026.09.11 更新日:2026.09.10
養育費減額調停とは?再婚・収入減で見直す条件と手続

離婚時に養育費を決めても、その後の失業、収入減、病気、再婚、新たな子どもの出生などにより、同じ金額を支払い続けることが難しくなる場合があります。
一度決めた養育費でも、取決めの前提となった事情に変更があれば、減額を求められる可能性があります。しかし、事情が変わっただけで金額が自動的に下がるわけではありません。相手と変更に合意して書面に残すか、合意できない場合は家庭裁判所の調停・審判を利用します。
「払えなくなったから今月から減らす」と一方的に判断すると、従前の取決めとの差額が未払分として積み上がる可能性があります。支払いを止める前に、現在の取決めと事情変更を資料で確認することが重要です。
本記事では、養育費の減額が検討される事情、再婚や養子縁組の考え方、減額調停の申立て、必要資料、調停中の支払い、2026年4月施行の改正との関係を説明します。
※本記事は2026年9月2日時点の一般的な制度を説明するものです。減額の可否、金額、変更時期は個別事情により異なるため、公開前に弁護士監修を行います。
目次
養育費は自動で減額される?見直しが必要な理由
裁判所は、一度決まった養育費でも、その後に予定していなかった収入の変動、子どもの進学、再婚などの事情変更があった場合、増額または減額を求める調停・審判を申し立てられると案内しています。
ただし、事情変更は「申出のきっかけ」です。減額が認められるかは、従前の取決めがどのような事情を前提としていたか、現在の父母双方の収入と扶養関係、子どもの人数・年齢・生活状況などを踏まえて検討されます。
最初に従前の取決めを確認する
まず、養育費が何に基づいて決まっているかを確認します。
- 父母だけで作成した合意書・離婚協議書
- 強制執行認諾文言のある公正証書
- 家庭裁判所の調停調書
- 確定した審判書・判決書・和解調書
- 口頭やメッセージだけの合意
書面には、月額、支払日、終期、臨時費用、事情変更時の協議条項などが記載されていることがあります。元の取決め時の収入資料や算定表も残っていれば、当時と現在の変化を比較しやすくなります。
まず話し合い、合意できなければ家庭裁判所へ
安全に連絡できる状況であれば、収入が下がった時期・理由、現在支払える額、見直しを求める期間を資料とともに伝えます。相手が同意した場合は、いつの支払分からいくらへ変更するか、未払分をどうするかを明記し、双方が確認できる書面にします。
相手が応じない、話合いが平行線になる、直接連絡することが難しい場合は、家庭裁判所へ養育費の減額を求める調停を申し立てる方法があります。
減額が検討される事情|収入減・失業・病気・再婚等
減額を求める際は、「苦しくなった」という説明だけでなく、何が、いつ、どの程度変わり、その状態がどのくらい続く見込みかを示します。
収入減・失業・休職
勤務先の業績悪化、雇止め、解雇、勤務時間の縮小などにより収入が大きく下がった場合は、事情変更として検討される可能性があります。退職日、失業給付、再就職活動、現在の収入が分かる資料を整理します。
一方、転職や独立、自発的な退職をした場合も、収入額だけで結論が決まるとは限りません。収入が下がった経緯、合理性、今後の稼働・回復可能性なども問題になり得ます。意図的に収入を低く見せれば減額できる、というものではありません。
病気・けが・障害
病気やけがで働けない、休職や勤務制限が続いている、継続的な治療費が必要になった場合は、診断書、休職証明、傷病手当金・障害年金等の資料、給与の変化を用意します。
病名だけでなく、就労と収入にどのような影響が出ているか、回復や復職の見通し、保険給付等を含む実際の収入状況を説明できるようにします。
再婚・新たな子どもの出生・扶養関係の変化
支払う側が再婚し、新たな子どもが生まれた、再婚相手の子と養子縁組をしたなど、扶養する家族が変わったことも検討材料になり得ます。ただし、新しい家庭を持ったという事実だけで、前の婚姻関係の子どもに対する養育費が消えるわけではありません。
父母双方の収入、再婚相手の収入、扶養する子どもの人数・年齢、生活状況など、全体を確認する必要があります。
子どもの生活状況の変化
子どもの就職や経済的自立、進路・居住状況の変更などがある場合も、取決めの前提が変わったかを確認します。一方、進学、病気、障害などにより必要費用が増えていれば、受取側から増額を求められる可能性もあります。
同じ「事情が変わった」という事実でも、減額方向に働くとは限りません。父母双方と子どもの現在の事情を一緒に確認します。
再婚や養子縁組だけで減額・免除になるのか
再婚に関する相談では、「自分が再婚した場合」と「相手が再婚した場合」、「再婚相手と子どもが養子縁組した場合」を分ける必要があります。
支払う側が再婚した場合
支払う側の再婚だけで、既存の養育費が自動的に減額されるわけではありません。新たな子どもの出生や養子縁組で扶養関係が変化した場合は、その事情を含めて見直しを求めることが考えられます。
家計表だけでなく、本人と現在の配偶者の収入、新たな子どもの戸籍、出生・養子縁組の時期などを整理します。新しい世帯の支出をすべて優先できるとは限らないため、子ども全体の利益を踏まえた検討が必要です。
受け取る側が再婚した場合
受取側が再婚したという事実だけで、生みの親と子どもの関係がなくなるわけではありません。再婚相手と子どもが養子縁組しているか、世帯の収入・監護状況がどう変わったかなどを確認します。
再婚相手と子どもが養子縁組した場合
養子縁組が成立すると、子どもと養親の間に法律上の親子関係と扶養関係が生じるため、養育費の見直しに大きく関係する可能性があります。しかし、実親の支払義務が当然にゼロになると決めつけることはできません。
養子縁組の有無、養親と実親の収入、子どもの生活状況、従前の取決めなどを資料に基づいて確認してください。
一方的に減額・支払停止するリスク
収入が減った場合でも、減額調停を申し立てただけで、従前の合意や裁判所の取決めが自動的に変更されるわけではありません。
一方的に減額・停止すると、従前の月額との差額が未払分として扱われる可能性があります。調停調書、確定審判、公正証書等に基づく養育費には、裁判所が案内する履行勧告や給与・預貯金等への強制執行が問題となる場合もあります。
2026年4月からは養育費の履行確保に関する制度も改正されています。一定の養育費債権には先取特権が認められ、取決めの時期によっては施行日後に発生する定期金へ適用される場合があります。減額を求める側にとっても、従前額を放置するリスクを早めに確認する必要があります。
支払いが現実に難しい場合は、何も連絡せずに止めるのではなく、次の対応を検討します。
- 収入減や失業を示す資料を確保する
- 相手へ事情と見直しの希望を記録が残る形で伝える
- 支払った金額・日付・振込先を記録する
- 合意できない場合は減額調停を早めに申し立てる
- 既に未払いがある場合は、変更希望分と未払分を分けて整理する
- 差押え等の通知が届いた場合は期限を確認して相談する
DV、脅迫、つきまといなどの不安がある場合は、当事者間の直接連絡を無理に続けず、裁判所や弁護士を介した方法を検討してください。
養育費減額調停の申立てから審判までの流れ

養育費の減額を求める調停は、父または母から、原則として相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所へ申し立てます。制度全体は裁判所の養育費に関する手続案内でも確認できます。
申立費用と基本書類
裁判所の養育費請求調停案内では、申立費用として子ども1人につき収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便料が示されています。郵便料は裁判所によって異なるため、提出先の最新案内を確認します。
標準的な提出書類には、申立書とその写し、対象となる子どもの戸籍謄本、申立人の収入資料などがあります。減額請求では、これに加えて、従前の取決めと事情変更を示す資料を整理します。
調停では父母双方の事情を確認する
調停では、裁判官と調停委員で構成される調停委員会が、双方から収入、子どもの生活費、扶養関係、事情変更の内容などを聴き、必要な資料の提出を求めながら合意を目指します。
金額の検討では、養育費算定表が目安として参照されることが一般的ですが、算定表の帯だけで決まるわけではありません。双方の収入資料、子どもの人数・年齢、個別の事情も考慮されます。
算定表の仕組みを確認するときも、現在の収入・扶養関係・子どもの事情を個別に整理してください。
合意できない場合は審判へ移る
減額調停で話合いがまとまらず不成立になった場合は、引き続き審判手続が行われます。裁判官が双方の主張、提出資料、子どもの状況等を踏まえて判断します。
審判に不服がある場合は即時抗告を検討できますが、期限があります。審判書を受け取ったら、内容と期限をすぐに確認してください。
必要書類|収入・家計・扶養関係・従前の取決め
減額を求める理由ごとに、変更前と変更後を比較できる資料を用意します。
従前の取決め
- 離婚協議書、合意書、公正証書
- 調停調書、審判書、判決書、和解調書
- 取決め時に使用した源泉徴収票、確定申告書、算定表等
- 支払開始から現在までの振込履歴
現在の収入と就労状況
- 源泉徴収票、直近の給与明細、課税証明書
- 確定申告書、青色申告決算書・収支内訳書
- 退職証明書、雇用保険受給資格者証、求職活動の資料
- 休職証明、傷病手当金、年金・給付金等の資料
- 転職後の雇用契約書や給与条件が分かる資料
病気・家計・扶養関係
- 診断書、医療費・治療期間の分かる資料
- 現在の世帯収入と家計の概要
- 再婚、出生、養子縁組等が分かる戸籍資料
- 扶養している家族とその収入・生活状況が分かる資料
相手の収入資料を持っていない場合も、分からないまま推測で埋めず、分かる範囲と取得を求めたい資料を整理してください。家計支出はすべてが減額理由として同じように扱われるとは限らないため、収入・扶養・子どもの事情との関係を説明します。
いつから変更されるか・未払分をどう整理するか
「収入が下がった月から当然に減る」「調停を申し立てれば申立月から必ず減る」と一律に決めることはできません。変更時期は、事情変更が生じた時期、相手へ減額を求めた時期、調停申立ての時期、従前の支払い、合意または審判の内容などを踏まえて検討されます。
そのため、次の記録を時系列で残します。
- 収入が下がった日と理由
- 相手へ減額を申し入れた日・方法・内容
- 相手からの回答
- 調停を申し立てた日
- 毎月実際に支払った金額と日付
- 未払いまたは不足分の月別一覧
減額調停中も、従前の取決めは自己判断では変わりません。支払継続が困難な場合は、払える範囲だけを黙って振り込むのではなく、資料と支払記録を持って対応を相談してください。
既に未払いがある場合、これからの月額変更と過去の未払分は分けて整理します。減額の申立てによって、それまでの未払分が当然になくなるわけではありません。未払分の取扱いも調停で話し合うことは考えられますが、相手の合意や裁判所の判断を確認する必要があります。
未払い時に受取側が利用できる手続については、養育費が支払われないときの対応も参照してください。
2026年4月改正と既存の養育費の関係
法務省が案内する改正法は2026年4月1日に施行されました。法定養育費や養育費債権の先取特権など、履行確保に関する制度が新設・変更されています。
法定養育費は、2026年4月1日以後に離婚または認知をし、養育費の取決めがないなど一定の要件を満たす場合に、取決めまでの暫定的・補充的なものとして発生する制度です。裁判所の案内では子ども1人当たり月額2万円とされています。
法定養育費の月額2万円は、既に合意・調停・審判等で決めた養育費を自動的に2万円へ変更する制度でも、一般的な養育費の相場でもありません。
既存の養育費を減額したい場合は、改正後も事情変更を整理し、合意または調停・審判で見直すことが基本です。先取特権や差押えの適用は、取決めの内容・時期・書面の有無等で確認が必要なため、個別に相談してください。
相談するタイミング
次のような場合は、一方的に支払いを変える前に、早めの相談を検討してください。
- 失業・休職・収入減が数か月以上続く見込みである
- 病気や障害により働き方が大きく変わった
- 再婚、新たな子どもの出生、養子縁組があった
- 相手が話合いに応じない、連絡が取れない
- 公正証書、調停調書、審判書等に基づいて支払っている
- 既に未払いが発生している
- 履行勧告、差押え、裁判所からの通知が届いた
- 相手から増額を求められている
弁護士へ相談するときは、「毎月いくらなら払えるか」だけでなく、従前の取決め、当時と現在の収入、収入減の理由、扶養関係、支払履歴を持参すると、検討すべき点を整理しやすくなります。
岩澤法律事務所への相談・依頼費用は、費用案内と個別の見積りをご確認ください。
よくある質問
Q. 収入が下がれば、すぐ養育費を減らせますか
A. 収入減は見直しを求める事情の一つですが、金額が自動的に下がるわけではありません。収入が下がった理由・程度・継続性、相手の収入、子どもの人数・年齢や生活費、従前の取決めの前提などを確認し、合意または家庭裁判所の手続で変更します。
Q. 再婚して子どもが生まれたら養育費は免除されますか
A. 再婚や新たな子どもの出生による扶養関係の変化は検討材料になり得ますが、それだけで既存の養育費が当然に免除されるわけではありません。双方の収入、すべての扶養関係、子どもの状況などを踏まえて判断されるため、資料をそろえて見直しを求めます。
Q. 相手が減額に応じない場合はどうすればよいですか
A. 相手の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所へ、養育費の減額を求める調停を申し立てる方法があります。調停で合意できない場合は引き続き審判手続が行われ、裁判官が提出資料や一切の事情を考慮して判断します。
Q. 減額調停中は従来の金額を支払う必要がありますか
A. 調停を申し立てただけで、従前の合意・公正証書・調停調書・審判等に基づく金額が自動的に減るわけではありません。一方的に減額・停止すると未払分として扱われる可能性があるため、支払いが難しい場合も自己判断で止めず、支払記録を残して早めに相談してください。
まとめ|支払いを止める前に事情・資料・手続を整理する
一度決めた養育費でも、収入、就労、病気、扶養関係、子どもの生活状況などに事情変更があれば、減額を求められる場合があります。ただし、収入減や再婚だけで自動的に減額・免除されるわけではありません。
現在の取決め、当時と現在の収入、事情が変わった時期、扶養関係、支払履歴を整理し、合意できない場合は家庭裁判所の調停・審判を利用することが大切です。
岩澤法律事務所では、養育費の減額・増額、調停申立て、未払分や差押えへの対応を含む離婚後の問題についてご相談を受けています。支払いが難しくなった段階で、書類を持ってご相談ください。
このコラムの監修者
岩澤法律事務所
岩澤 千洋弁護士宮崎県弁護士会所属
日々の生活で生じる悩みの多くは法的な問題に分析することができ、何かしらの法的な解決(目的地)を見つけることができます。まずは、お気軽にご相談ください。どのような問題であれ、何事も依頼者の方の立場利益を第一に考えて、できる限り依頼者の方の利益にかなう解決(目的地)に向けて最善の努力をいたします。